日本の近代化と昆布、伝統的な生産方法

国内外の交易の切り札だった乾燥昆布

日本における海藻や昆布の歴史は長い。 古来より日本の良質な乾燥昆布は薬の代用品として重宝され、国内外の貿易の主要品として日本の歴史や産業に大きく貢献してきた。

廻船(港から港へ旅客や貨物を運んで回る船の意) 北国船の船絵馬 1633年円覚寺奉納 絵馬に描かれた船と鉄製勾玉のアンカー

昆布の歴史にとって、18世紀中頃を中心に活躍した北前船と呼ばれる商船群の存在は大きい。船主自体が寄港地でその土地の特産品を売買して交易する北前船は”動く総合商社”と呼ばれ、昆布は重要な商品のひとつであった。

北前船の影響は日本国内の経済だけでなく食文化にも及び、北前船の活躍が現在の和食の基礎を作ったと言っても過言ではない。高級品だった昆布が庶民の口に入るようになったのもこの頃からである。

一方その頃、海産物を食べる機会に乏しい中国内陸部ではヨウ素の摂取不足により甲状腺が肥大する風土病が流行していた。 少量で高濃度のヨウ素を含み、軽量で賞味期限の長い日本の昆布は薬として珍重され、琉球王国(現在の沖縄、日本の最南端に位置する)を介して中国への昆布の密貿易を行っていた薩摩藩(現在の鹿児島、九州南部に位置する)は大きな利益を得た。この利益が倒幕資金の一助となって明治維新を迎えることになるが、これは別の機会にご紹介したい。

日本の昆布の90%を生産する北海道

日本の昆布の90%は、北海道という日本の北部の島で生産されている。 北海道は日本で2番目に大きく、年平均気温5〜10℃、年平均降水量700〜1700mmの冷涼・少雨な島である。広大な土地と豊かな自然が魅力のひとつで、パウダースノーでも知られる北海道のニセコは外国人旅行者にも人気の観光スポットである。

北海道は農業や酪農、漁業が盛んで、日本最大の食の宝庫としても有名だ。北海道の食産業発展には日本の近代化と北海道開拓の歴史が深く関わっている。 また、開拓の過程で持ち込まれた欧米の料理や先住民のアイヌ料理など、さまざまな食文化が交わり特色ある名物料理が生まれた地域でもある。

昆布の美味しさを育むロシア大陸の湿地と北海道の自然

種の起源は海水からだと言われているように、海水のミネラル濃度分布は人の体液中のミネラルバランスと相関関係が見られ、生命の母たる海は人の健康にとっても大きな意味を持っている。そして昆布は、海水と似たミネラルを保持しながら人間にとって有用なものを多く凝縮した海の野菜である。

日本の昆布の90%が育つ北海道は、オホーツク海と親潮域に囲まれ、世界でも突出して生産性の高い海域を持つ。海洋の生産力とは、海洋植物プランクトンがどの程度光合成し、有機物を生産できるか、という指標である。

親潮という寒流の名前は、「親」という字のごとく、栄養塩が多く魚類や海藻類を養い育む親にあたることに由来する。このオホーツク海や親潮の恵みは、周辺陸域から供給される鉄の存在に支えられており、その供給源はロシアのアムール川の流域の湿地である。

また北海道には活火山が多いことも昆布に良い影響を与えている。 北海道には北方領土も含めると31の活火山がある。この地質や河川からも、豊富なミネラルを含む水が海に流れ込み、昆布を育てている。

知床半島 羅臼

北海道の東北端に位置する知床は、2005年に世界自然遺産に認定された。 北海道の先住民のアイヌ語で”地の果て”を意味する知床とその周辺の海には、オホーツク海で作られた流氷が接岸する。この流氷が運ぶプランクトンに、希少生物を含む多種多様な生物が集まり、その豊かな海が育んだサケやマスが川を遡り、猛禽類の植物資源になる。海、川と森を生き物たちの命が循環して豊かな生態系を形作っており、昆布もまたその一部である。

先住民族アイヌから受け継がれた伝統的な生産方法

ブロニスワフ・ピウスツキが撮影したアイヌ

開拓前の北海道は蝦夷地と呼ばれ、13世紀頃から日本の本州などとは異なるアイヌ文化やオホーツク文化など独特の文化を持つ時代が続いていた。

先住民のアイヌは、すべてのものに神が宿るとするアニミズム信仰であった。 自然界の神、火の神、山の神、森の神、狩猟の神などに感謝し、神々が与えてくれた食材を必要なときに必要な量だけいただく生活を営んできた。

アイヌにとっても昆布は交易上重要な品で、夏は熱心に漁をしていたことが記録に残っている。

経験と熟練が品質を左右する昆布生産

昆布漁

日本の歴史を切り開いてきた乾燥昆布の生産工程は、伝統的である。一部機械化できる工程もあるが、ほとんどが人の手によるものだ。

昆布生産者にとって海は畑である。質の良い昆布を作るための漁場の手入れや育成中の昆布の手入れはもちろんのこと、昆布を傷めずに収穫する技術、翌年も良い昆布を獲るための技術も、先人の知恵や自身の経験から学んでいく。水揚げ後の乾燥の工程や、庵蒸(あんじょう)と呼ばれる熟成手法や期間も、熟練と技術が必要だ。

※昆布の天日干しの様子。現在は生産者の多くが機械乾燥に切り替えているが、天然昆布はまだ天日乾燥にこだわる生産者も多い。(撮影:Kumi Matsushita)

「昆布生産は大変。だけど手抜きはできない」と生産者たちは口を揃える。

昆布生産の大きな流れは、育成から水揚げ、乾燥、切断、選別、荷造りの5段階だが、その作業工程は多く、出荷までに2年の月日を要する。中でも、水揚げから23の工程を経て生産される羅臼昆布は深い味わいは、昆布の王様と呼ばれる所以だ。

日本の出汁食材は、製造期間は長い。しかし、数分間水から煮出すと、栄養豊富で深い味わいの出汁を作ることができる。乾燥昆布は忙しい現代人に適したスーパーフードなのだ。

次回、乾燥昆布のうま味とレシピに続く。

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